500字で読む日本文学〜『斜陽』/太宰治

― 没落する家族の中にある“生”の力。
『斜陽』は、戦後日本の没落する上流階級を背景に、ある母娘の生き方を描いた太宰治の長編小説です。「斜陽」とは沈む太陽、つまり衰退を象徴する言葉。作品の随所に、戦争後の価値観の崩壊と、人間の内なる再生が描かれています。
語り手は、貴族の娘・かず子。戦争で地位と財産を失った一家の中で、かず子だけは「新しい女」として自分の意志で生きようとします。母の死、弟の自死、そして結婚できない恋。その中で彼女は社会的規範を破ってでも、自分らしく生きることを選びます。
かず子の思想や行動は、当時の日本社会では過激にも映りましたが、「自分で考え、自分で選ぶ」ことの尊さを強く訴えるものでした。彼女が書き綴る言葉の一つひとつが、生々しくて、切実で、読む者に迫ってきます。
『人間失格』よりも静かで内面的な作品ですが、女性の強さや、人間がどう再生していくかという希望も描かれています。太宰=暗い、と思っている人にこそ読んでほしい一作です。
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